「見積・見積書」というと皆さんご存知でしょうが、では「積算」は、というといかがでしょうか。
新築に限らず、改修工事・補修工事等には見積はつきものです。その工事にいったいいくらお金がかかるのかわからなければ、その工事を行えるのかさえ決める事が出来ないでしょう。
ですから見積もりを取って予算と相談する事になりますので,一度は見積書を目にした方も多いと思います。
見積書といっても、細かな明細項目(※1)のあるものから、”1-式いくら”もしくは”坪いくら”といった内容の解かりにくいものまでさまざまですが、これらを含めて見積書といいます。
(※1)壁のクロスであれば、その数量(u数)にそのクロスの仕様
に合わせた単価を掛け、他の項目も同じ様に積み上げて総額
を出したものを見積内訳書といいます。 |
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見積書実例 (実際に行われた住宅の塗装改修工事) |
それでは積算とは何かといいますと、
積算というのは、正確な設計図に基づ゛いて、住宅・マンション等建築物の構造体を構成する全ての材料を算出し、それらの数量に地域性やスケールメリット(※2)を考慮した単価を乗じ、部位別、工事種目別等に分類計上し、建築工事費総額を算出するものですので、”積み上げていく”という意味で見積との違いを言い表せるのかと思います。
積算というものは何年も前から仕事として確立されていまして、設計・施工と並んで建築の中の重要な位置を占めています。分類としては設計業務の一部といえるのでしょうが、平成2年度から「建築積算資格者」という資格が創設されるなど、かなり専門的な職種と呼べるでしょう。
では具体的に積算という仕事をどう進めていくかというと、
1.図面の入手(設計・施工もしくは施主等担当者との打合せの上) |
↓
2.図面のチェック、 不明点・要望等が有れば質疑提出 |
↓
3.図面より部屋毎、部位毎に構成材料の拾い出し
〜基本的に官民合同の組織で制定された「建築数量積算基準・解説」に従って作業を進めていくことになります。〜
例
部位 |
名 称 |
摘 要 |
単位 |
数量 |
根拠式 |
壁 |
ビニールクロス
石膏ボード |
ボード面
t12.5 |
u |
7.82 |
4.75*2.40
-0.80*2.00
-2.20*0.90 |
壁 |
ビニールクロス
石膏ボード |
ボード面
t12.5 GL工法 |
u |
26.24 |
(7.85+7.55)*2.40
(0.60+0.25)*2.40
-AW14-AW-16 |
・
・
・
|
|
↓
4.部屋毎、部位毎に拾い出した各項目の数量の集計
壁 |
ビニールクロス
ボード面
石膏ボード
t12.5
|
ビニールクロス
ボード面
石膏ボード
t12.5 GL工法
|
化粧FB
t6 |
磁器タイル
100角
耐水PB
t12.5 |
項目 |
室名 |
|
u |
u |
u |
u |
合計 |
120.45 |
103.46 |
2.54 |
12.38 |
玄関・ホール |
12.45 |
2.35 |
0 |
0 |
居間 |
45.26 |
30.28 |
0 |
0 |
洋室 |
36.50 |
23.56 |
0 |
0 |
便所 |
2.34 |
1.86 |
2.54 |
0 |
台所 |
0 |
0 |
0 |
9.65 |
|
・
・
・
|
↓
5.集計した項目を工種別に振り分け数量をまとめる
|
名称 |
仕様 |
数量 |
単位 |
単価 |
金額 |
摘要 |
21 |
内装工事 |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
壁ビニールクロス |
500# |
20.5 |
u |
650 |
130,325 |
- |
- |
壁石膏ボード |
t=12.5 |
6.3 |
u |
330 |
2,079 |
- |
- |
壁石膏ボード |
t=12.5GL工法 |
14.2 |
u |
450 |
6,390 |
- |
- |
壁化粧FB |
t=6 |
2.5 |
u |
850 |
2,125 |
- |
|
・
・
・
|
↓
6.工種別の金額を積上げ建築費を算出
諸経費等を加味し建築総工事費を求める。
|
名称 |
仕様 |
数量 |
単位 |
単価 |
金額 |
摘要 |
- |
建築主体工事 |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
1 |
直接仮設工事 |
- |
1- |
式 |
- |
500,120 |
- |
2 |
土工事 |
- |
1- |
式 |
- |
2,079,220 |
- |
3 |
地業工事 |
- |
1- |
式 |
- |
1,200,000 |
- |
4 |
コンクリート工事 |
- |
1- |
式 |
- |
6,550,880 |
- |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
・ |
- |
合計 |
- |
- |
- |
- |
97,881,350 |
- |
|
↓
|
名称 |
仕様 |
数量 |
単位 |
単価 |
金額 |
摘要 |
- |
○○○工事 |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
A |
共通仮設工事 |
- |
1- |
式 |
- |
1,500,000 |
- |
B |
建築主体工事 |
- |
1- |
式 |
- |
97,881,350 |
- |
C |
電気設備工事 |
- |
1- |
式 |
- |
13,000,000 |
- |
D |
給排水設備工事 |
- |
1- |
式 |
- |
28,000,000 |
- |
E |
外構工事 |
- |
1- |
式 |
- |
7,250,000 |
- |
F |
現場管理費 |
- |
1- |
式 |
- |
1,460,000 |
- |
G |
一般管理費 |
- |
1- |
式 |
- |
1,050,000 |
- |
- |
小計 |
- |
- |
- |
- |
150,141,350 |
- |
- |
消費税 |
- |
- |
- |
- |
7,507,067 |
- |
- |
総合計 |
- |
- |
- |
- |
157,648,417 |
- |
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以上は部屋内部を例としましたが、これ以外に仮設・躯体(コンクリート等)・土工事、木造住宅であればその木材なども上記と同様に積上げていきます。
簡単に積算という仕事を説明しましたが、建物の用途や構造が多岐に渡り、新建材・新工法などが次々と生まれてきていますので、実務レベルではかなり高度な知識を要する仕事の一つであるといえます。
(※2)例えば壁のクロスであれば、規模の大きな建物に1,000u貼る方が、住宅等に100u貼る場合より 1.00u当りの単価が安くなるということです。 |
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